大学 「保護猫カフェの不便をIoT技術で解決する」
芝浦工業大学デザイン工学部の3年生必修科目である「プロジェクト演習」において、MESHを取り入れた授業を実施。MESHを活用して授業を実践された益子先生に、実施背景や授業展開について伺いました。
- 学校名 :芝浦工業大学 デザイン工学部
- ご担当先生 :益子 宗 先生
- 生徒数 :14人学級
- 実施時間 :全7回×3時限授業 第2回以外でMESHを活用(1時限100分)
- 使用端末 :MESHアドバンスセット×14セット(デモ機をご活用)
今回は教育関係者向けのデモ機貸し出しサービスをご活用いただきました
MESH - 教育関係者向けお貸し出し (meshprj.com)
本授業の狙いは?MESHを授業に採用したきっかけは?授業の流れ・様子第1回 保護猫カフェの課題発見&MESHを使ったワークショップ第2回 保護猫カフェの見学第3・4回 プロトタイプ制作(技術演習)第5回 中間発表第6回 最終発表準備第7回 最終発表最終成果物「Shippo. –離れていても感じる温もり-」by 古峰愛理「ねこMAPとねこちゃん相関図」by 箸方向日葵REMOTE-PON by 三嶋麻由奈「狩猟心を引立てる 【ネコ戯らすくん】」by 菊池慈英学生たちの感想益子先生が今回授業でMESHを使用してみた感想は?参考
本授業の狙いは?
「授業の目的は、実際の課題や現場を想定したサービスをデザインする経験を積むことでした。それにより、プロトタイピングを通じた、サービスをデザインするための考え方を身につけ、社会のニーズを理解することができると考えています。」
MESHを授業に採用したきっかけは?
「この授業は、プログラミング経験の少ない学生が多く参加しています。そのためプロトタイピングまで作成することを踏まえると、導入のハードルがそこまで高くないMESHを使ってみることにしました。」
授業の流れ・様子
授業課題
保護猫カフェにおけるさまざまな不便を見つけ、IoTの技術を用いて解決するためのサービス(システム、プロダクト、空間)をデザインし、MESHを使ってプロトタイプを作成し提案してください。
第1回 保護猫カフェの課題発見&MESHを使ったワークショップ
- 保護猫カフェの課題発見
オリエンテーションののち、チームでデスクトップで保護猫カフェについて調査し、発表を行いました。
- MESHを使ったワークショップ
MESH開発者 萩原(以下、萩原)が豊洲キャンパスへ訪問し、「MESHと100均グッズで『新しい遊び』をつくってみよう」というテーマでワークショップを行いました。学生の皆さんは初めてのMESHでしたが、すべてのMESHブロックに触れチームごとに新しい遊びを作りました。最後は各チームでデモと発表を行い、「仲良くなる遊び」、「パワーアップしたバランスゲーム」など様々な提案がされました。
ワークショップのタイムテーブルと使用した資料を共有します!ぜひご活用ください!
⏰タイムテーブル
所要時間 | 活動内容 | 活動の狙い |
---|---|---|
5分 | イントロダクション ・自己紹介 ・今日の流れ | |
5分 | 質問1:最近遊んだ? 「最近1週間で遊んだ人」で手を挙げてもらう Yes/Noで答えてもらい、Yesの人にどんな遊びか聞いてみる。 | ・テーマである遊びへの足場かけ ・一方通行にならないように早い段階で発言を促す |
5分 | 質問2:子どもに戻ったら何して遊びたい? ペアで話し合ってもらう(3分) 全体共有(2分) | ・遊びのイメージを膨らませる |
5分 | ブリューゲリュの絵から遊びを探す ・ペアで見つけてもらう(1分) ・全体共有(4分) | ・遊びのイメージをさらに膨らませる |
5分 | MESHの紹介と遊びのデモ ・講師から一例を紹介 | ・アウトプットイメージを掴んでもらう |
0:25 | MESHの基本チュートリアル ・振ったら音が鳴る(2分) ・音が鳴ったら光る(2分) ・音と同時に光る(1分) ・録音したメッセージを再生する(3分) ・ロジックの紹介(1分) ・自由に触る(15分) | ・MESHの使い方について知る ・自分たちでアイデアをどんどん試すことの面白さを知る |
10分 | 休憩 | |
13分 | GPIOの使い方 ・モーターの説明(2分) ・やってみてもらう(5分) ・金属の接触の説明(1分) ・やってみてもらう(5分) | |
5分 | アイデア制作/テーマ説明 説明したら基本的に自由 いったん机から離れて、ものやカードを見に来るようにさせる | ・視点をMESHからいったん離す ・制作に入る前にゴールと発表形式の説明をすることで、グループワークの目的をしっかりと理解できるようにする ・グループ毎に取り組むことで、協働やプロトタイピングのプロセスを体感する |
27分 | 制作 | |
25分 | 発表 1グループ3分 ・フィードバックする班を決めておく | ・実演形式で行うことでアイデアを発表することを体験する ・フィードバックする班を決めておくことで、発表して終わりではないようにする |
10分 | 振り返り | ・振り返りを個人ごとに行う ・次の改善につなげる ・今日行ったことを他の学びにどう活かせるか考えてもらう |
5分 | 今後のための情報を紹介 ・ネット接続やレシピ集 ・サポートページの紹介 |
📎ワークショップに使用した資料
第2回 保護猫カフェの見学
ネコリパブリック東京お茶の水店へ訪問し保護猫カフェを見学、また株式会社ネコリパブリック代表取締役首相 河瀬麻花氏(以下、河瀬氏)との座談会を行いました。株式会社として保護猫活動を行うネコリパブリックの考え方をお伺いしたり、保護猫カフェのお客さん目線で体験したりすることで、それぞれ保護猫カフェに潜む課題を見つけ、解決したい課題の明確化を行いました。
ネコリパブリック
https://www.neco-republic.jp/
第3・4回 プロトタイプ制作(技術演習)
第2回で発見した課題を基に解決のアイディアを検討。第1回で使用したMESHを活用し、実際のプロトタイプ制作を行いました。GPIOブロックによるモータ制御やIFTTT連携などへ挑戦する学生もおり、それぞれのアイディアに合わせて技術演習を進めました。
第5回 中間発表
解決したい課題と、解決のアイディアについて中間発表を実施。河瀬氏も中間発表に参加し、最終発表に向けてアドバイスをしました。
授業の後半では、アドバイスを基にコンセプトやプロトタイプのブラッシュアップを行いました。
第6回 最終発表準備
最終発表に向けてプレゼン資料の作成や、プロトタイプのブラッシュアップを実施しました。
第7回 最終発表
学生によるプレゼンテーションを実施しました。保護猫カフェ訪問時に感じた課題を、ねこ・お客さん・猫カフェスタッフなど様々な視点で整理し、具体的なサービス提案とMESHを使ったプロトタイプの発表を行いました。
また当日は、河瀬氏と萩原も豊洲キャンパスへ訪問。各学生の発表に対してビジネス・技術の両視点からコメントし、学生と交流しました。
最終成果物
本記事では4つの作品を紹介します。
「Shippo. –離れていても感じる温もり-」by 古峰愛理
概要
「保護猫カフェでの実習を通して、3つの視点の課題を発見しました。
1つ目にカフェの問題点として、保護猫カフェの保護した猫が譲渡できるまでの間に飼育費や医療費がかかってしまうこと・定期的なお金を集めることが難しいこと、2つ目に保護猫自身の問題点として、誰かの大切な1匹になりたいけどなかなかなれないこと、3つ目にカフェに来たお客さんの問題点として、里親になりたいけど実際なるにはハードルが高いこと、マンションや1人暮らし・年齢など物理的に厳しいということがあるのではないかと考えました。
それらの課題に対してスペースをシェアして猫を飼うことができる#シェア猫というサービスを提案しました。サービスの概要としては、猫を飼いたいけど飼えない人に、新たに増設される保護猫カフェのシェルターで猫を飼えるサービスです。このサービスによって、日常的なお世話をスタッフさんにしてもらい、会いたい時に会いに来れて、zoomなどを用いて常に見ることができる環境を作り、家で猫を飼えない人でも猫を飼うことができる体験を提供したいと考えています。
このサービスを運用するにあたって、常に一緒にいることができず不安や心配があるという課題が出てきたので、それに対してのソリューションとして、プロダクトも提案しました。その名も、shippo-離れていても感じる温もり-です。このプロダクトは実際のねこのリアルタイムな動きを動くしっぽを通じて離れていても感じることができます。おもちゃで遊んでいる時は横に大きく揺れたり、クッションで休んでいる時は小さく揺れます。このプロダクトがあることで、zoomを見るためのきっかけにもなればいいなと思っています。
この2つのソリューションを通して、半里親という、新たな切り口のネコ助けのポジションを作り、もっと多くの人に猫を保護できる環境を作れたらいいなと思っています。」
サーボモータ―とGPIOブロックを使って、猫のしっぽを動かす仕組みを作っています。猫らしい動きバネを組み合わせた機構にも工夫を感じます!
「ねこMAPとねこちゃん相関図」by 箸方向日葵
概要
「保護猫カフェにて、どの様な猫がどこに居るか分からないため自分に合う猫が分からなかったり、里親条件に2匹共にと書いてあるのに猫同士の関係性が一目で分かるものがないなどの課題を発見した。それ等を解決するために2つ提案する。
1つ目のねこMAPでは、猫の居場所とその猫の状態を表記し、自分に合う猫が何処でどんな状態で居るのかを知ることが出来る。例えば寝ている猫や遊んでいる猫、ケンカしている猫はどこにいるか分かったりする。2つ目のねこちゃん相関図では、猫同士の関係性を一目で分かる様にする。その際に、猫同士の関係性が分かるような写真をカフェ内で撮影し、お客様同士で共有することができる。これらはそれぞれ店内の張り紙代わりとしての役割を果たし、壁にかけられた案内用のタブレット端末や自分の手元のスマホなどで閲覧することが出来る。これらの猫の状態や関係性を把握するためにMESHを使用する。具体的には、MESHにて振動の検知度合いにより猫が活発かどうか判断したり、猫同士が同一の振動を発生した回数によって関係性を推測したりしている。」
猫の首輪に動きブロックを装着し、猫の状態や猫同士の関係性を測定します。関係性を表すアプリ画面やその遷移までしっかり作りこまれていて、猫カフェのサービスになっていそうなイメージがわきます!
REMOTE-PON by 三嶋麻由奈
概要
「私が提案したのはまるでがちゃがちゃのように募金ができる募金箱REMOTE-PONです。
今回ネコリパブリックさんのお話を聞く中で保護猫団体として自立し、運営していくためにはお金を集めることが必要不可欠であることを伺いました。保護猫カフェにお邪魔した際に目にした一般的な募金箱では資金を集めるのは難しいのではないかということ、そもそも募金というものにはする側に一定のハードルがあるのではないかと考えました。そこで「募金と思わせない、ついお金を入れたくなってしまう」というのをコンセプトにREMOTE-PONという募金を提案しました。
REMOTE-PONはお金を入れて正面のハンドルを回すと、保護猫カフェのネコのいる部屋(ネコ部屋)の様子が映し出され、そこに設置されている仕掛け(ねこじゃらしが動く/おやつが出る)が作動します。カメラと仕掛けの位置は近く、仕掛けが動くことでカメラ側にネコが近づいてくる構図になっているため、自分がお金を入れたことでネコがアクションを起こしてくれることを楽しめるようになっています。3つあるネコ部屋のうちどこの仕掛けが動くのか、どちらの仕掛けになるか、どのネコが反応してくれるか、すべてランダムになっているため「まるでがちゃがちゃ」としました。」
お金を回す仕掛けの部分に動きブロックを、仕掛けを動かす部分にGPIOブロックを使用しています。ガチャガチャにワクワクする気持ちを、募金とつなげる、その発想がとても素敵です!
「狩猟心を引立てる 【ネコ戯らすくん】」by 菊池慈英
概要
「ネコの動きに応じておやつを射出し、転がす装置、【ネコ戯らすくん】。
今回課題と背景として夜間など人が居ない時間帯では、ネコが遊ぶ相手がおらず、身体を動かすきっかけがないことに着目し、特に好奇心旺盛な子猫にとっては不満感が溜まるのではないかという課題から、ネコが一人でも遊べるような装置の制作に着手しました。
目的として、人が居ない時間帯に活躍するネコの好奇心を刺激するプロダクトの提案を掲げ、また、ターゲットとしては、活動的・野生心溢れる性格ではあるが、人が苦手な子猫に設定、主な場所として保護ネコカフェや家族が住む家を想定しました。こうしたネコが、プロダクトがあることによって、人前でははしゃげない子でも身体を動かすきっかけ+好奇心が満たされる成果が期待できます。プロダクトの動作としては、装置前方にあるセンサーによって猫の動きを感知し、上面ボックスからおやつを射出、遠くへ転がすといった流れになり、動作モデルとしては、閉店前や消灯前にMESH のボタン(電源)を押し、夜間にネコがうろうろして、装置の前に差し掛かると、センサーが反応し、装置からおやつが射出され、おやつを追いかけてネコが身体を動かすといった流れになります。」
従業員が押すボタンブロックと、おやつ射出の仕組みにGPIOブロックを使用しています。人と触れあうのが苦手な猫もいます。そこへ気づき、その猫に向けてとことん配慮をしているとても優しい作品だと感じます!
上記4作品を含む最終成果物14作品の詳細は、益子研究室のホームページにてご覧いただけます!
学生たちの感想
- 最初はプログラムという言葉におびえていたが、初回のMESHワークショップで「これならいける感」を感じた。
- MESHは、メカメカしくなく、かわいい。
- 実際にMESHを触ってみて、沢山のアイデアが想起できた事や、MESHを通じて初めて話した人と一緒にコミュニケーションを取る事が出来て、MESHの莫大な可能性を感じました。
- 簡単なワークから、実際に自分たちでアイデア制作して発想力を養うことができた。MESHを今まであまり知らなかったが、感心する点が多くて時間内ずっと「凄い」と言っていた気がするし、とても楽しくて面白い授業だった。
益子先生が今回授業でMESHを使用してみた感想は?
「自身の周りにもMESHを使っている人が多く、MESHを通していろいろなことができることは知っていましたが、実際に学生から様々なアイディアが出てくる様子を見ることができました。
また、本授業を受けていた学生は、これまで3Dモデリングや模型作りはしていたものの、動く、光るというインタラクティブな要素はつけれていませんでした。MESHを通して、モノに命を吹き込む感覚が初めてだった学生が多いと思います。
そのような意味では、これまでの授業の中で一番やりたかったことに近づくことができました。」