実践例|感動体験プログラム「視覚障がいのある小学生を対象にした発明ワークショップ」

ソニーグループが、子どもの教育格差という社会課題の解決に向けて、放課後NPOアフタースクールと取り組む「感動体験プログラム」。そのプログラムの一環として、視覚障がいのある小学生を対象にMESHを活用した発明ワークショップが、2024年2月に開催されました。
本記事では、ワークショップの様子や、準備にあたって工夫したポイントなどをご紹介します。
 

ワークショップ概要

  • 実施日:2024年2月10日
  • 実施時間: 2時間
  • 実施先:視覚障がい児親子の会『いちごの会』
  • 参加者:小学生9名とその保護者     ボランティアスタッフ 8名     運営 6名
  • 内容:MESHを活用して、発明家になろう!

「子どもたちに、新しい体験の機会をつくりたい」 保護者からの声が、取り組みのきっかけに 

今回のワークショップは、視覚障がいのある小学生とその兄弟、姉妹を中心に親子で活動を行っている『いちごの会』から「感動体験プログラム」へ届いた一通の問い合わせからスタート。
  • 視覚障がいのある子どもたちに、さまざまな体験をさせてあげたい
  • 子どもたちにとって、何か新しい体験や学びの機会をつくりたい
MESHが特別支援学校で活用されていることから、「MESHなら、何かできるかもしれない」と、「いちごの会」の保護者の皆さんから直接いただいたお声に応えるかたちで検討を始めました。

さまざまな感覚を使ってプログラミングを体験する 身近なものと組み合わせたワークショップ

使用機材/素材

MESH
MESH以外
  • タブレット端末(「MESHアプリ」がインストールされたiPad)
  • モーター、プロペラ(事前にGPIOブロックに接続)
  • 普段子どもたちが使い慣れている日用品など
 

プログラムの流れ(前半)

4種のMESHブロックを順番に体験してもらいました。
子どもたちが体験を通して学べるプログラム設計にすることで、ひとつひとつのMESHブロックの概念や、実現できる仕組みを理解してもらいました。

プログラムの流れ(後半)

後半は、今まで習ったことをもとに、自由に制作をしてもらいました。また、自分が普段使いなれた日用品とMESHを組み合わせて発明をしていきました。
プログラムの流れ(後半)
⑤「しゃべるコップを作ってみよう」
⑥モーターを使ってみよう
⑦バディと一緒に発明タイム!
⑧最終発表

子どもたちの自由な発想から生まれた作品

発明タイムでできあがった作品を、全員の前で発表しました。2つ以上の作品を制作して発表した子どももおり、大盛り上がりの最終発表となりました。
ここではいくつかの作品を紹介します。

おしゃべり白杖

点字ブロックの上にいる人に聞こえるようにするために、白杖を振ると声がする仕掛けを作りました。動きブロックの振りで音が出るような仕組みを作り、さらにボタンブロックで2パターンの声に切り替えられるような工夫もしていました!
おしゃべり白杖の様子
 

二重びっくり箱

二人で共作した二重びっくり箱です。たくさんの仕掛けを詰め込んで、ファシリテーターにプレゼントしました。
明るさブロックや動きブロック、人感ブロックなどたくさんのブロックを使って、大きな音や面白い音が鳴るびっくりな要素がたくさん仕掛けられていました!
二重びっくり箱の様子
 

さわやかペットボトル

黒いキャップのペットボトルを開けると、プシュッとさわやかな音がするペットボトルを作りました。キャップをあけると光が入ることに気づき、明るさセンサーを使って制作しました!

「またやりたい!」「驚いた」 参加した子どもと保護者の感想は?

参加した子どもからは、プログラミングに関心を高め、今後も発明したり、さらにはコードを書いてみたいといった、自己効力感の高いコメントが多く見られました。また、保護者からはプログラミングの体験に加えて、友達とアイデアを共有したり、言語化して発表する体験があったことや、そのときの子どもたちの様子に驚きの声があり、満足度の高い結果となりました。
 

参加した子どもの声

  • 初めは何をするのだろうと思っていたけど、丁寧に説明してくれたので使い方がよくわかった。今はもっと発明してみたいしメッシュブロックが欲しい。僕の考えをバディが操作してくれて成功したことが嬉しかった。また発明できるようなワークショップに参加したい
  • いろんなことができそうでワクワクして面白かった。他にしたいことは、自分でブロックを作ったり自分でとにかくやってみたい。自分でコードを書いてやってみたい
  • 初めは何をするのだろうと不安だったけどやってみて楽しかった。れんれんとぱぎー(MESH開発チーム)すごいと思った。みんなの作品を聞いて面白いと思った。また発明品を作ってみんなに使ってもらいたい
  • はじめて知ったことがたくさんあった。プログラミングをはじめて知った。
 

保護者の声

  • プログラムの内容も、進行もとてもわかりやすく、ボランティアさんのサポートも入っていたので、安心して一緒に操作ができ、ブロックがさまざまな音や機能があったので、とても楽しめていた。予想以上に子どもたちみんなが楽しんでいる様子が見れて良かった。
  • 普段人見知りで発表などの場は好きではない子ですが、最後は自分から手を上げて発表する様子が見れてびっくりしました。他のみんなの発表を聞いたりすることで、僕も、と触発されたのかなと思った!
  • 初めての取り組みだったのでもじもじしていたり、使い方を把握することに専念していました。なりちゃん(ファシリテーター)が盛り上げてくださるにつれて後半は心を開いて発表することができていました。あんなに短時間で変わることはめったにありません。普段あまり感情を表に出さない子達も、とっても良い笑顔が出ていたことに驚きました。帰宅後は、「この仕組みにこういう音が出せればいいね」等、早速開発者が最後におっしゃっていた、今あるものにプラスしてアイデアを生み出そうという発想が出てきていた
 

音や凸シールで伝える。 ヒアリングを重ねて進めた工夫

今回、視覚障がいのある子どもたちへの初めてのワークショップということもあり、事前に参加児童の保護者へのヒアリングを行うとともに、全体の6割が障がいのある社員で構成されているグループ会社のソニー・太陽の社員にもデモに参加してもらい、そのフィードバックなどをもとにプログラム内容を検討しました。
製品、ワークショップコンテンツ、運用面での工夫をいくつか紹介いたします。
 

製品の工夫

  • MESHブロックに突起物のあるシールを貼ることにより、他のブロックとの差別化を図る
  • モーターを使うブロックは使いやすいように事前に準備を行う
 

コンテンツの工夫

  • 所要時間:通常1時間のプログラムを2時間に拡大し、MESHをじっくり手に取り触れて確かめる時間や、丁寧に説明する時間を増やした
  • プログラムの内容:子どもたちにはプログラミングを音や風など五感を使って楽しめる内容を検討し、視覚に頼らない体験になるよう工夫した
 

サポート体制や会場運営

  • ボランティアスタッフ プログラム開始前にボランティアスタッフへの事前レクを行い、機器の操作やプログラムの進行を事前に説明した。子ども1名につき、ボランティアスタッフが1名ついてサポートする体制をとった
  • 会場設営 明るすぎると見えづらいお子さんがいるため、一部明るさの調整や導線確保などを行った
  • その他 運営に参加する社員はユニバーサルマナーBOOKに目を通した
 

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