小学校 理科「電気の利用」

小学校6年の理科「電気の利用」の授業でMESHを活用し、授業実践をされた丸亀市立城乾小学校の松浦先生に、授業実施の背景やどのように授業を展開されたのかを伺いました。
 
  • 学校名 :香川県 丸亀市立城乾小学校
  • ご担当先生 :松浦 陽平氏
  • 児童数 :24人学級( 2~3人1グループ学習)
  • 実施時間 : 本時45分×1回、前時45分×2回
  • 指導案公開 :なし
 

今回の授業を実施した背景は?

本校では、今年度現職教での取り組みとして、以下の3点を挙げています。
 

① 思考の可視化・思考操作

よりよい「学び」をつくるために考えの可視化に焦点をあてる。学び合いをしたとしても「ことば」だけでは相手に通じない。特に、発達障害のある子・集中できない子は、話すだけではなかなか伝わらない。目に見える形で示す。また、思考ツールを活用することで「深い学び」の実現をめざす。
 

② ICT・メディア活用の推進

ICT機器を、当該の授業の目的を達成するための手段として用いるということを大切にする。「学び合い」や「仲間づくり」にICTを効果的に活用していく。
 

③ 学び方を学ぶ

NHK for Schoolコンテンツ等視覚的教材の活用を積極的に取り入れた授業づくりを進めることで、子どもが自ら学び・考え、共に伸びる学習の創造につなげる。
本校の特徴として外国籍にルーツのある児童が全体の2割を占めており、なかなか言葉だけでは伝わりづらい場面が多々あります。動画など目に見える形で示すことができるICTやの活用を推進し、普段からiPad(その他タブレット)やNHK for Schoolを授業で活用している。国籍や言葉を超えて、全ての子ども達が互いに教え合ったり、意見を交わしたりすることで、深い学びを目指しています。
今年度からプログラミング教育がカリキュラムに組み込まれたことから、どのようにすれば子ども達のプログラミング教育が目指す「プログラミング的思考の育成」ができるのか、またプログラミング教育とはどのように進めていけばいいのかを本校の教職員全体で研究する場とするために、校内現職教育の一環として実施しました。

授業テーマはどのように決めましたか?

6年生理科の内容にMESHを使ったプログラミング学習があったことと、本学級の児童が昨年、別の教材を使ってプログラミング学習を行っていたことから、教科書の内容をより発展させた内容でもできるのではないかと考え、授業テーマを設定しました。

本授業のねらい、目標は?

家電製品やスマートフォン、電気自動車など日常生活のいたるところで電気が使われており、電気は生活になくてはならないエネルギーとなっています。しかし、子ども達がその電気がどのように作られ、どのように使われているかに目を向ける機会は少ないです。そこで本単元では、電気がどのように作られ、変換され、使われているかを手回し発電機やコンデンサーを使い、電気を実際に発電・蓄電する活動を通じ、身の回りには電気の働きを目的に合わせて制御したり、効率的に利用したりしているものがあることを体験的に捉えられるように活動することを目標としました。
本授業では、プログラミングを使った体験的な学習を通じ、「自分たちで省エネかつ便利なプログラムを作ること」をめあてとし、活動しました。前時までに、電気の蓄電・発電などの基本的な知識は学習しており、身の回りには電気を効率的に活用しているものが多くあることも振り返りました。そこで、実際に自分たちでプログラムを作る活動を行うことで、身の回りの電気の使われ方や効率的に活用されている道具に興味を持たせるとともに、プログラムをうまく制御するために友達と協働しながら繰り返し活動を重ねたり、他のグループと比較して考えたりすることで、体験的に学習しながら、論理的な思考力を身に付けることをねらいとしました。

MESHはどのように活用しましたか?

本授業のめあてである「省エネかつ便利なプログラムを作る」を目指すため、MESHを活用することで、子ども達はそれぞれが思い描く便利さ(防犯・衛生・生活習慣など)を自由に表すことができました。事前にそれぞれのブロックがどのように活用できるかを学習・体験していたので、スムーズにプログラミングを行うことができました。

用意した機材と授業の様子

使用機材/素材

  • MESH以外
    • ワークシート
    • 付箋
    • コンデンサー小型扇風機(GPIOブロックにつなげるもの)

学習指導計画(本時9 / 10)

電気をつくる

1時間目
  • 学習指導
    • 町の様子やこれまでの経験から、身の回りで電気を利用しているものを探し、問題を見いだす。
  • 評価規準
    • 教科書や生活経験から、電気と自分たちとの暮らしとの関わりについて問題を見いだし、表現しているか。【態】
2時間目
  • 学習指導
    • 手回し発電機や光電池で電気を作り、作った電気を利用する。
  • 評価規準
    • 手回し発電機や光電池を使うと発電できることを理解し、それらを正しく扱いながら、電気を作ったり、作った電気を利用したりして、得られた結果を適切に記録できているか。【知・技】
 

電気の利用

3時間目
  • 学習指導
    • コンデンサーを使うと、蓄電できることを知る。
    • コンデンサーに電気を蓄え、蓄えた電気を光や音、運動に変えて利用できることをまとめる。
  • 評価規準
    • コンデンサーを使うと、蓄電できることを理解し、ためた電気を何に変えて利用できるかについて調べ、得られた結果を適切に記録できているか。【知・技】
4時間目
  • 学習指導
    • 電熱線に電流を流すと発熱するかどうか、発砲ポリエスチレンを使って調べ、まとめる。
    • 豆電球と発光ダイオードの特徴を捉える。
  • 評価規準
    • コンデンサーを使うと、蓄電できることを理解し、ためた電気を何に変えて利用できるかについて調べ、得られた結果を適切に記録できているか。【知・技】
 

電気の有効利用

5時間目
  • 学習指導
    • 電気を効率的に使うための工夫について考え、まとめる。
  • 評価規準
    • 既習の内容や生活経験を基に、電気を効率的に利用するための工夫について考え、より妥当な考えをつくりだし、表現できているか。【思・判・表】
6時間目
  • 学習指導
    • 人が近づくと明かりがつき、しばらくすると消えるプログラムを作り、明かりをつけたり消したりする。
  • 評価規準
    • プログラミング教材の特徴を理解し、進んでプログラミングに取り組めているか。【態】
 

電気を利用したものを作る ※MESHを使用

7-8時間目
  • 学習指導
    • これまでに学んだことを生かして学校生活を便利にするプログラムを考える。
  • 評価規準
    • 既習内容や生活経験を基に、生活を便利にするプログラムについて考え、完成さるために必要な材料や方法を発想し、表現できているか。【思・判・表】
9時間目(本時)
  • 学習指導
    • プログラムを組んで、実験する。グループ間で交流し、交換した意見を基に、プログラムを組みなおす。
  • 評価規準
    • ペアで考えた内容を基に、プログラムを組めているか。【知・技】
    • 他のグループの良い点や改善点を伝えることができているか。【態】
    • 交換した意見を基に、自分達のプログラムを改善することができているか。【思・判・表】
10時間目
  • 学習指導
    • 作ったプログラムを発表する。
    • 身の回りの電気がどのように使われ、その結果生活にどのような影響を与えているかについて考える。
  • 評価規準
    • プログラミングを通じて、身の回りの電気が効率的に使われ、自分たちの生活を便利にしていることに気付く。【態】

どんなことを工夫しましたか?

「省エネで、生活をより便利にするプログラムを考えよう」という学習課題を設定し、プログラムの基となるレシピを作成しました。レシピはペアでワークシートを使って作成し、その際に思考の流れが見やすく、動きの組み替えがしやすいように黄色の付箋に動きを書き込み、動作の流れを作りました。
本時では、レシピを基に実際にプログラミングを行いました。プログラミングをする場面では、支援としてMESHの使い方が分からない、うまくできない児童のために、大型モニターに常に作成のモデルを掲示しておき、質問があれば適宜操作をしながら説明していました。また、扱いが難しいGPIOブロックは、他のブロックとつなげやすいようにレシピのひな型を教師の方で作成し、あらかじめタブレット内に入れておきました。考えたプログラムを作っていく中で、「もっと~したい」、「○○したいけど、どうすればいいのか分からない」など、表現したい動作の完成度を高めたり、問題の解決の仕方が分からなかったりするなど様々な壁にぶつかると考え、他のペアと交流し、互いのプログラムを実際に体験して、意見を交換する時間を取りました。プログラムを組みなおす際に、はじめに考えたプログラムと交流した意見を区別できるように、交流した意見は赤色の付箋で伝えるようにしました。

児童が開発した作品

  • 温度や湿度が変化すると、光で知らせてくれるプログラム
  • 自作の目覚まし時計
  • 話し合い活動の様子

今回授業でMESHを使用された感想を教えてください。

センサーの種類が豊富で操作性がよく、一部扱いが難しいブロックもありましたが、教師側で使うブロックを制限するなど工夫すれば、プログラミング教育の足がかりに使ってもよいほど扱いやすい教材でした。メディアに不慣れな児童でも、意欲的に取り組むことができ、事前に使用した際には、はじめはなかなか操作がおぼつかない児童でも、授業の後半になるとスムーズに操作できていました。
また、図で表すので思考のつながりのイメージが持ちやすかったです。どこが間違っているのか、どこを改良すればよいのかなど、動きのつながりが見やすく、思考の整理もしやすいので、プログラミングについて論理的に理解しやすいと感じました。