「探究的な学習 × MESH」オンラインセミナー 開催レポート
2022年1月26日(水)に、「IoTブロック「MESH」を使った新しい授業づくり ~探究的な学習での活用方法~」というテーマで、オンラインセミナーが開催されました。
本セミナーは、実際に授業実践をされた大田区立赤松小学校教諭の益子雄太先生と、株式会社島津理化の及川峻尚さん、ソニーマーケティング株式会社の今村の3人が対談形式で実施。益子先生に授業実施の背景や授業展開の様子を説明いただきながら、探究的な学習におけるMESHの活用方法や実際の授業実践について、率直な意見が交わされました。
本セミナーのアーカイブ配信と益子先生の授業実践例
アーカイブ配信
本授業の実践事例記事 / 指導案
「どうやってプログラミングを組むか」よりも「このプログラミングを組んで、どのように活用するか」を考えさせる授業づくり
前半は、益子先生ご自身が実践された、総合的な学習の時間「わたしたちの手で、コロナ禍の生活を明るくしよう」という授業についてのご紹介。校舎改築工事中のため限られた空間で過ごさなければならないうえに、コロナ禍の影響で新しい生活様式も守らなければならないこの苦しい状況を逆手に取り、この学校生活を自分たちの手で変えることを目標にした授業です。
単元の流れは以下のとおりです。まずは指導案に掲載していない「MESHを知る」ところから始め、子どもたちはMESHを使うと何ができるのかを理解。その後、学校内で不便に感じていることや問題点を洗い出し、アイデアを出し合って作品をつくり上げたとのこと。さらに作成した作品は、学級内で設定された「コロナに負けるな!赤松発明コンテスト」で発表し、優秀作品に選ばれた作品は、放送朝会で校長先生より全校に向けて紹介されたそうです。
0.導入~MESHを体験しよう
導入の説明では、益子先生が実際にMESHのデモを実演。「MESHは、このように、非常に簡単に扱えるプログラミング教材です。私が考えるMESHの最も面白いところはここで、つなげ方よりも、何のためにそれをつなげるのか、それをつなげることでどのように活用するのかを考えさせて、学習に取り組ませました。」とのこと。
本授業でのポイントは、シンプルに扱うことのできるMESHを活用し、「どうやってプログラミングを組むか」よりも「何のためにプログラミングを組むのか」というところにありそうです。
実際の授業では、まずは児童がMESHに慣れるために、身の回りのものとMESHを組み合わせて新しい作品をつくる活動を実施。箱を開けると風が吹くびっくり箱や、ピコピコハンマーを振ると音が鳴ったり写真を撮られたりするおもちゃなど、とてもユニークな作品が生まれたようです。
1.コロナ禍になって、どのように生活が変わったのか話し合おう
次に行われたのは、学級やグループ内でコロナ禍になって変わったことについての意見の出し合い。グループごとに学校内を回り、校内で不便に感じていることや問題だと思うことを探し、発見した問題は以下のようにクラス内で共有されたようです。
2.コロナ禍の生活を、明るくするためのアイデアを考えよう。
前時に校内で見つけた課題に対して、MESHを活用して解決するアイデアを考え、ワークシートに記入。子どもたちには、「レシピ(プログラミング)はなるべくシンプルに。」「作品名も面白いものに」ということを意識的に伝えたそう。
3.MESHを活用して、コロナ禍の生活を明るくするしくみを作ろう。
前時で考えた設計図をもとに、MESHを使って作品づくりを実施。まずは机の上でレシピを考え、それから実際に現地へ行き、作品を設置、さらにその場で検証・修正を繰り返したそうです。
益子先生の指導方法にも工夫がありました。「子どもたちの意欲を高めるために、学校の先生方や主事さん方にも協力していただいて、『校内にあるものなら何でも使っていいよ』と、伝えました。『校内にあるものを、自分で判断して、そしてもし必要であれば、事務室の主事さんに聞いて、お借りする。』または、『木材が必要だったら図工室の図工の先生に説明をして、許可を得る。』という風に、子どもたちに伝えました。子どもたちの発想や、学習意欲が高まる一因になったかと考えております。」
4.「コロナに負けるな!赤松発明コンテスト」でアイデアを発表しよう。
子どもたちのモチベーションを上げるための工夫も。「コロナに負けるな!赤松発明コンテスト」を学級内で設定し、アイデアを発表する場面をつくられたそうです。
子どもたちが考えた作品例
気温が 30 度を超えたらファンが回って空気を循環させるしくみ。ボタンを押せば停止するが、切り忘れてもタイマーで一定時間経過するか、人感センサーで人がいなくなったら停止する。
コロナ禍なのに、朝学習の際に話している人がいるので、教室内のボリュームが大きくなった際に注意するしくみ。また、8時15分以降に遅刻して教室に入ってきた人は一言注意をして、写真を撮影して先生に知らせる。
指導する際に心がけたこと
後半は、授業を行う際のポイントや、工夫された場面など、指導案には書かれていない実際の授業実践で大切なことを、益子先生に伺いました。
子どもたちの学習意欲を湧かせる意識づけ
子どもたちの学習意欲を高めさせるために、「低学年の児童や学校のためにつくる」という意識づけを行いました。また、「赤松発明コンテスト」を校長先生に相談した際に、快く受け入れていただき、校長賞は放送朝会で全校児童に紹介したらどうかとご提案いただけたことで、さらに子どもたちの意欲も高まりました。
答えを教えない
課題もその解決方法も無数にあるため、子どもたちの発想を大事にしました。子どもたちには、なるべく答えは教えず、考えさせ、気づかせることを意識しました。ただし、発想に行き詰ったグループにはヒントを与えて発想に導かせるようにしました。
グループ編成について。3人1グループへのこだわり
グループ編成について、今回は3人1組でグループをつくりました。以前の学習では、好きな人同士で組ませたこともありましたが、、男女のバランスやプログラミングに対する能力なども考慮し、あらかじめグループを決定したうえで作品づくりに取り組ませました。その結果、ひとりひとりがそれぞれの役割を果たし、輝くことができました。
また、今回は、3人という人数にもこだわりを持ちました。2人よりも3人の方が発想の幅が広がります。4人ではチーム内で2つに別れてしまったり、自分の発想を発言しない児童が出てきてしまったりしてしまう懸念点があり、3人という人数設定は特にこだわりました。
プログラミングのためのプログラミングにならないように。「実用性」を意識した作品づくり
児童には、「プログラミングのためのプログラミングにならないように」というのを意識的に声かけ、「実用性」を意識した作品づくりをさせるようにしました。作品を早くつくり終わったグループに対しても、さらに「実用的」な作品になるような課題設定を与えるようにしました。例えば、「ファンを回す」というプログラムを作成したグループに対して、「どうやったら消えるの?」というような声かけをしたり、ボタンを使用しているグループに対して、「それは感染拡大につながらないの?」と質問をしたりして、実際に実用することを想定した作品づくりになるようにしました。
MESHは、シンプルな操作ではありますが、発想次第で複雑化でき、無限に幅が広がっていくところがとても面白いですね。
本セミナーのアーカイブ配信や益子先生の授業実践例はこちらで公開しています。
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